1.開会挨拶
研究会会長
東京都立青山高等学校校長 小澤 哲郎
最初に本研究会の小澤会長より挨拶がありました。
近年報道にもあったように,共通テストに入ることが発表されたことに触れ,さらに以下の話をしました。
「東京都のような大都市では情報科教員を採用しているが,他の全国の先生はそうではない状況もあります。また,それでも情報科の教員は1校に一人です。だからこそ,都高情研ではこういった発信をしていく役割があるのです」と述べ,本研究会の役割を明確にしていました。
2.講演
『小中高の教育の連携と展望〜1人1台端末、プログラミング教育、カリキュラム・マネジメント等を踏まえて〜』
放送大学教授 中川 一史 先生
中川先生からは小中高校の連携と一人一台の端末等のお話をいただきました。
今後情報Ⅰとなった時にどのように授業を行えばいいのかについて述べ,それは教員研修用の教材を参照してほしいことを伝えられていました。
その教員研修用教材を作られた教科調査官である鹿野先生に,ご登壇いただき,鹿野先生から本教材の紹介がありました。
情報科の構造としては大きく,「問題の発見・解決」が目標であり,そのツールとして「情報デザイン」「プログラミング」「データの活用」があることを話されました。これらの内容は国民的素養としてのレベルであると情報Ⅰについて位置づけていました。
その後,中川先生からは,小中高の取り組みを紹介され,その連携と,高校の情報がその中核を担うものであることを強調されていました。そして,ICT端末が一人1台となり,いつも手元にある文房具と同じものであることを伝え,その状況となるからこそ,一斉学習から個別学習,さらに協働学習ができる環境が用意されたことを述べておりました。小中高の連携とICTの一人一台によって,大きく学習が変わることを述べておられました。
3 研究発表①
『ダッシュボード作ってみた』
東京都立小岩高等学校 椋本 哲也先生
椋本先生はダッシュボードを作って生徒に振り返りができる環境を用意されていました。つまりダッシュボードによって自分がどのように評価されているのかわかり,自分の状況がスピードメーターのようにわかりやすく表示されると説明されていました。特に定期考査は総括的な評価が中心となっているが,主体的に学習に取り組む態度の評価として形成的評価が求められている。その形成的評価のためのダッシュボードとなっていることを強調されていました。
『ニュースを通してメディアリテラシーを考える』
田園調布雙葉中学高等学校 小林 潤一郎先生
News Picksの蒲原さんとの共同発表でした。
蒲原さんからはNewsPicksの紹介から始まり,経済ニュースメディアであり,大人が顔を出して責任をもって発言をすることをコンセプトとしていることを紹介されていた。それの学校版の紹介でした。学校専用空間を作り,記事として出し,ニュースで学びあうというものです。特に,ニュースを学ぶのではなく,ニュースで学ぶことを強調されており,生徒は考え,発信する練習をとなることを述べておりました。
特に,気になったものは主観であるが,それを人に共有するものは,人に見られるという客観で考える,つまり生産者側の視点に立つという学びがあることを述べていました。
4 ポスターセッション&企業関係の皆様からの情報提供
東京都立調布南高等学校における教育実践-「社会と情報」の教育内容から振り返る情報教育-
東京都立調布南高等学校 片江 康裕先生
シミュレーションの導入
東京都立町田高等学校 小原 格先生
Google Workspaceを利用した情報システム作成の授業実践
筑波大学附属高等学校 速水 高志先生
Monaca&ぷよぷよプログラミング・大相談会
アシアル株式会社(アシアル情報教育研究所)岡本雄樹さん
文章向上ソフト&WEBテスト
株式会社ザ・ネット 橋本 均さん
5 研究発表②
『研究発表ポスターづくりの指導案:既存の動画コンテンツを利用して』
筑波大学附属駒場中学校・高等学校 植村 徹先生ほか
ポスター指導に何が必要かを考えることについて発表をされていました。そのためのデザインや研究ポスターのお作法,さらに伝わる研究発表ポスターについて考えたそうです。
デザインについては自学可能であるものを目指し,既存コンテンツは利用できないかと考え,外部の組織の既存の動画コンテンツを活用した。それらは3時間分の自習として,動画を見てからひな形ファイルを作る実習を経て,ポスターを作らせる実習をさせるとしていました。
結果として,デザインの目を育むことができ,見る側の視点が育まれたと発表され,デザインと動画コンテンツの活用の有用性を述べていました。
『自由な創造性発揮の場と学びのためのPC整備がもたらす発信力・問題解決能力の育成』
東京都立三鷹中等教育学校 能城 茂雄先生
三鷹中等はICTパイロット校の指定を受けており,GIGAスクールの前から生徒にICTを配った教育活動について実践をしてきたことを踏まえてのお話であった。その中でも印象的であったのは,スペックが低いものではなく,子供たちの文房具代わりにするためにはスペックの高いPCであることの必要性を述べていました。PCの性能を上げたところ,子供たちの利用の頻度が上がったとのことです。また,一人1台で運用することで,CALL教室の取り合いがなくなったこと,さらにCALL教室の活用ついて検討ができるようになったことを述べていました。さらに運用の基本方針として,生徒が自分で管理し,学校に保管せず,生徒は自宅で充電することを伝え,学校の負担を考えられているものでした。また,メディアラボというさらにハイスペックなPCを生徒に提供し,プロが使うレベルのものを設置し,生徒にモチベーションを与えることを述べていました。特に学びの環境を整えることが大切さを繰り返し強調されていました。
6 閉会挨拶
研究会副会長
東京都立立川高等学校副校長 福原 利信
鹿野先生から講評をいただきました。
遠隔での発表会もこなれてきたし,プログラミングだけではなく情報デザインや一人1台についても議論がされ発表の質が上がっていると話されていました。そして東京都の実践は常に注目がされていることを述べており,我々への激励をしてくださいました。
最後に閉会の挨拶として,本研究会の福原副会長から,運営の大変さはあったものの,オンラインであることの良さがあること,さらにこういった時代だからこそできることもあったことを述べました。そして,4月以降の新しい研究をしていくことを伝え,それは新たな方向性を示唆するものでした。